グレンコー

お城や遺跡、イギリスには素敵な場所が沢山あるけれど、個人的にこれまで一番感動した景色はスコットランドのグレンコー（Glencoe）だったかも。自然の険しい山は、力強く、息を呑むほど美しかった。立っている大地から頭の先っぽまでエネルギーが流れるような、体の底から震えが来るような何とも言えない感覚でした。この自然の凄さに勝るものは無い。そんな思いで、その時の景色を目に焼き付けようと、しばらく見入っていた記憶があります。


実はここ、『グレンコーの虐殺（The Massacre of Glencoe）』が行われ、歴史的にも意味のある場所なのです。簡単に言えば、イングランド王（ウィリアム3世）への忠誠を求められたスコットランドの部族たち。グレンコーに住んでいたマクドナルド族も忠誠誓約しようとするも、不幸にも役人が指定地から引き揚げていたなどして、期限（1 Jan 1692）に間に合わず、逆らった見せしめとして、部族が虐殺されてしまったという悲劇的な出来事なのです。虐殺と言っても人数的には少なく殺害されたのは40名程でしたが、脱出できた部族の人々を待ち受けていたものは、死ぬための飢えと過酷な真冬の寒さだったのです。

そんな悲しい歴史と自然の力強さを秘めたグレンコー。人生に迷った時、この景色を見たら、自分の悩みが吹っ飛びそうな、とても前向きにさせてくれる景色です。